本日10時、STANDAGEと株式会社DCPは、商工中金の参加のもと、決済一体型の貿易プラットフォームの共同検討を開始したと発表した。目標は、電子船荷証券(eB/L)の法制度化が見込まれる2028年度の商用化だ。考え方は一行で言える。eB/Lと、商工中金が発行するトークン化預金「DCJPY」による支払いを、一つの同時決済として行う(共同プレスリリース、商工中金のリリース)。STANDAGEが採用するeB/LプラットフォームのCargoXも、同日に欧州で発表する。
このタイミングは偶然ではない。5日前の10月23日、政府は船荷証券の電子化を可能にする商法などの改正案を閣議決定した。電子化した証券は「電子船荷証券記録」と位置づけられ、紙と同じように貨物の権利を持ち、移すことができる(NHK、10月23日)。書類は、法的にもデジタルになろうとしている。そして今週、お金を置き去りにしないために、銀行が一歩を踏み出した。
誰もが知っている、にらみ合い。
見知らぬ相手にネットで物を売ったことがある人なら、知っているはずだ。買い手は発送されるまで払いたくない。売り手は入金されるまで送りたくない。どちらも理不尽ではない。会ったこともなく、追いかけるのも難しい相手から、自分を守っているだけだ。マーケットプレイスはこれをエスクローで解決した。第三者がお金を預かり、お金と商品が同じ合図で入れ替わる。
国際貿易は、同じにらみ合いに桁が増え、間に国境が挟まったものだ。輸出企業は出荷して、支払いを待つ。輸入企業は支払って、書類が貨物より先に届くことを願う。先に動いた側が、その間の日数のリスクを負う。その溝が深すぎれば、取引そのものが生まれない。アジア開発銀行は、世界の貿易金融ギャップを2.5兆ドル、世界貿易の約10%と推計しており(2026年1月)、その多くを中小企業が負っている。
これまでの答えは、銀行が先に動くことだった。
この百年、答えは銀行を間に置き、銀行の間で紙を動かすことだった。信用状、荷為替手形、窓口から窓口へ国際宅配便で運ばれる船荷証券。仕組みとしては機能するが、遅く、費用がかかり、書類では埋められない溝が残る。船は速くなったが、紙は速くならなかった。日経新聞は改正案を伝える記事で、その課題を率直に書いている。原本が船より後に届き、輸入企業が貨物を受け取れない。
eB/Lは、運ぶ手間を解決する。2026年6月4日、DCSAは、CargoXを含む五つのeB/Lプラットフォームが、国際P&Iグループの承認を受けた共通の法的附属書のもとで、互いにeB/Lをやり取りできるようになったと発表した。それでも、速くなった書類は取引の半分にすぎない。リリースが言うとおり、最後の「金流(代金決済)」が切り離されたままでは、貿易手続き全体の真の効率化は実現しない。
節目は、確認が「引き金」になること。
三者が示したのは、エスクローの考え方を、銀行が担う形で、モノの貿易に当てはめることだ。売り手のeB/Lは、Digitrad Payments内のデジタル金庫に置かれる。買い手は、銀行の営業時間ではなくコンテナの動きに合わせて、いつでもオンラインで支払いを申請できる。銀行による所定の確認を経て、スマートコントラクトがDCJPYによる支払いとeB/Lの移転を結びつけ、お金が動いたときにだけ権利が動く。DCJPYは認可を受けた銀行の預金であるため、企業は、リリースの言葉を借りれば「普段の預金口座と同じ感覚で」使える。

注目したいのは、この設計が何を残しているかだ。銀行の判断はなくならない。その判断が「引き金」になる。銀行の確認は、紙の流れのどこかで行われる一工程ではなく、書類とお金が一緒に動くための条件になる。だからこれはデモではなく節目だ。銀行が、自らの確認が決済に直接組み込まれる設計に加わった。しかもその設計は、他の金融機関も同じ基盤につながれることを想定している。
正直に残る課題も、リリースに書かれている。これは共同検討であり、実証実験はこれから準備される段階だ。eB/Lの改正案は閣議決定されたが、まだ国会で成立していない。そして「同時に」がいちばん簡単なのは、両者が同じ基盤の上にいるときだ。海外の取引相手まで届くかどうかは、国際送金ネットワークとの接続にかかっており、リリースはそれを今回ではなく次の段階としている。第一段階は仕組みを証明する。規模は、その後の、正直な問いだ。
私たちが構築している層
私たちが担うのは、金庫と、その周りの取引だ。Digitrad Paymentsでは、eB/Lと支払いが一つの手順で交換され、各段階に誰が、いつ、いくらの記録が残る。それは、銀行が封筒を開けずに取引を確認するために必要な記録でもある。書類を運ぶのはCargoX、お金を運ぶのはDCP、預金を発行し確認を担うのは商工中金。私たちはその二つを結び、どちらも先に動かなくて済むようにする。
そして私たちは、これを一つの製品ではなく、インフラとして構築している。将来的には、他の金融機関もDCP上でトークン化預金を発行し、Digitrad Paymentsとつながれる設計であり、海外送金ネットワークへの拡張も視野に入れている。金融機関やパートナーが、ゼロから作らずに、自らの顧客にこの仕組みを届けられるようにするためだ。
この一歩を公の場で踏み出してくださった商工中金とDCP、そしてその上で動く書類のレールを築いてきたCargoXに、心から感謝している。2028年に向けた目標は、言葉にすれば簡単だ。見知らぬ相手と取引する日本の中小企業が、「どちらが先か」を問わなくて済むようにすることだ。
リトマス試験
直近の出荷を一つ選び、二つの時刻を書き出してほしい。書類が買い手に渡った時刻と、お金が売り手に渡った時刻だ。その間の時間を数え、その間リスクを負っていたのは誰かを書いてほしい。
答えが「誰も。同時だったから」なら、あなたの会社はこの共同検討が目指すものをすでに手にしている。答えが「自社が、9日間」なら、それが先に動く側の代償だ。荷為替手形や信用状を日々扱っている方に聞きたい。銀行の確認は、実際にはどの段階で行われているだろうか。貨物が着く前か、着いた後か。ぜひ意見を交わしたい。
